◆心華獨笑◆ 
第四百三七稿
 「日と月」




オシャレな外観のギャラリー



 この日、韮崎市の郊外にある『日と月』という陶芸ギャラリーを訪ねた。初めての場所で、グーグル先生を頼りに、導かれるままに車を進める。しかし、こんな所に本当にギャラリーなんかあるのかあ?と疑いたくなるような牧歌的な風景が続く。右だ左だと案内通りに走れば、果たしてそこに、実にお洒落なギャラリーが現れたのだった。





『日と月』の看板 





店内もオッシャレ〜!
 この『日と月』というギャラリーは、ずいぶん前から行こうと思っていた。その経緯はよーこの持った不思議な御縁からであった。

 かつて、よーこが「茅ヶ岳歴史文化研究所」のスタッフとして、平安時代の遺跡発掘調査を行っていた時、その現場にアルバイトで来ていた三井さんという若い男性が居た。

 その時、三井さんは、短期の発掘バイトに来ていたのだが、実は本職は陶芸家だということだった。よーこは興味を持ち、三井さんの陶芸について、いろいろ聞かせてもらっているうちに、驚くべき事実を知ることになる。



 今回訪問したギャラリー『日と月』は、よーこが知り合いになった三井亮さんの、お父様である三井康生さんが、生まれ育ったここ、山梨県の韮崎市の山間に『日月窯』という窯場を立ち上げたことが始まりだという。

 そのお父様の康生さんが、陶芸の修行をしたのが、岐阜県の土岐市だというではないか。よーこの実家の隣の市だ。

 更に話を聞くと、その土岐市で美濃焼陶祖十三代景清という陶芸家に弟子入りをして修行したという。

 この十三代景清の息子さんが、十四代康景というのだが、この十四代康景さんというのが、なんと! よーこの美術大学時代の同級生だったのである!


三井さんは、最初はピンときていなかった




話を進めると三井さんはようやくよーこを思い出した 




とても素敵な空間
 御縁を持ったお話しが少々ヤヤコシイので、簡単に纏める。

 よーこが山梨県の発掘現場で知り合った人は、陶芸家の息子で、本人も陶芸家だった。その父親が修行したのが岐阜県のよーこの実家のすぐ近くで、弟子入りした師匠の陶芸家の息子が、よーこと大学時代の同級生だった、というお話し。

 これは、かなり驚くべき御縁である。

 そういう経緯により、この御縁を持った三井さんの工房兼ギャラリーの『日と月』に是非とも行ってみたく、行こう行こうと思っていたのだ。ただ、今まで、中々その機会がなかった。


 

作品もシンプルで上品なものばかり


 更にお話をもう少し続ける。

 よーこが大学生の時の同級生に加藤正治君という人が居た。この人は、岐阜県の土岐市出身で、よーこの実家がある瑞浪市の隣の市だ。よーこは日本画専攻で、加藤君は彫刻専攻だった。専攻は違っても、偶然にも同郷の同級生ということで、よく覚えているという。

 その加藤君とよーこは大学を卒業後には疎遠となったが、父親の美濃焼陶祖十三代景清の跡を継いで、十四代康景という名の陶芸家となり活躍していたという。

 しかし、不幸は突然訪れた。2012年8月13日、交通事故により急逝。48歳だった。

 よーこは、この十四代康景(同級生の加藤正治君)の不幸を発掘現場で、三井さんの息子さんに聞くまで知らなかったのだ。


さり気なさが素晴らしい


 

落ち着いちゃうね


時間がゆったり流れる 
 

午後の逆光がたまらない


回りは田園風景 




古い家具がよく似合う
 最初は山梨県の遺跡発掘現場での偶然の出会いに話ははずみ、不思議な御縁を喜んで語る内に、やがてお話しは、知らなかった同級生の死に至る。これは、よーこにとって、かなりのショックだったようだ。

 その後、安土桃山時代から続くと言う、美濃焼陶祖という名の襲名が、十四代康景さんの死によって、途絶えてしまったのかどうか。詳細はよくわからない。

 ここまでが、今回、『日と月』というギャラリーとの御縁を持つに至った経緯なのだが、ギャラリーに行きたかったのは、この偶然の御縁という事だけではなく、三井亮さんの作品に非常に興味を持ったという事の方が大きい。


 

工房の方も案内してもらった


 三井さんの作品の特徴は、その独自に開発した釉薬にある。

 お父様の康生さんが、岐阜で修行中に師匠から「その土地でしかできない焼き物をやるといい」と言われたのが、釉薬研究を始めるきっかけとなったという。

 山梨に戻った康生さんは『日月窯』を開き、山梨の果物の木の枝を灰にした釉薬の研究を続け、5年をかけて独自の色を出す釉薬を編み出した。

 たとえば、巨峰の枝を使うと紫の発色となり、すももを使うとやわらかい肌色が出ると言った具合。その果物の持つ自然の色が陶器の肌に現れるのだ。


これが窯


 

工房もカッコイイ!
 

所狭しと親子の作品が並ぶ


 

左がお父さんの三井康生さん、右が息子さん亮さん

(お父さんの康生さんの師匠が、よーこの同級生だった正治君の父親である)




巨峰の枝の灰釉による発色
 右の写真の作品は、巨峰の枝を灰にして、釉薬としたもの。

 巨峰というぶどうの持つ紫色が、その枝を灰にして作った釉薬に現れる。これはけっこうオドロキで、釉薬の状態では単なる濁った灰色に過ぎないのだが、焼き上がると美しくも上品な紫色に変化するのだ。

 下の写真の作品は、すももの枝を灰にして、釉薬としたもの。

 こちらは、柔らかなピンクを含んだ肌色が上品だ。温かみのある色合いに、粒上の濃い色のアクセントが効いている。





すももの枝の灰釉による発色

(今回購入した、コーヒーカップと豆皿)
 



 その他にも、さくらんぼや桃の枝などから作った釉薬の作品もあった。

 しかし、自分的には、やはり巨峰の釉薬と、すももの釉薬の作品が魅力的だった。両方ともイイなあ。

 実は、今回は、このギャラリーで、お祝いの品を入手するというのも、目的の一つだった。

 つい先日、よーこの甥っ子が、結婚をした。その甥っ子の結婚祝いの何かを、このギャラリー『日と月』で見つけれるとイイなあと、思ったのだ。

 来たい来たいと思いながら、中々来れなかったギャラリーだったが、甥っ子のお祝いの品探しが、このギャラリーに来るきっかけになった。


巨峰もすももも両方イイな



 

こちらは喫茶スペース





喫茶スペースでお茶を御馳走になった
 結局、よーこと二人でアレコレ迷った結果、コーヒーカップと、おつまみ用の豆皿のセットを購入した。

 結婚祝いなので、当然二組購入したのだが、同じ色ではなく、一方は巨峰の釉薬の紫色の作品で、他方はすももの釉薬の淡い肌色の作品。

 つまり、ペアだけど色違いという形にした。そのカップと豆皿を、木工作家のハツリの板盆に乗せてセットとし、完成。

 めちゃくちゃお洒落なプレゼントがゲット出来た。



 

お支払いを済ます
 

イイもんがゲットできたー!



 

今度は自分達の陶器も欲しいね



 想像以上の素敵なお祝いプレゼントがゲット出来て、よーこは、大満足。少々予算オーバーだったが、魅力的な作家物を、その作家本人から直接購入出来たのだから、これ以上の幸せはない。
 
 京都で新婚生活を送っている甥っ子夫婦も、きっと喜んでくれるに違いない。

 次回来る時は、今度は自分達の器を買いたいものだ。巨峰の釉薬とすももの釉薬の器は、我が家にも欲しい。

 次回までに、しっかり、お小遣いを貯めておきましょ。


シンプルな玄関





とても静かで素敵なギャラリーだった 





 そんなわけで、不思議な御縁を持ったギャラリー訪問でした。よーこにとっては、中々衝撃的な事実を知る事にもなったのだが、また新たなる出会いにもなった。

 次回は自分達の器を買いたいが、自分でも久々に陶芸をやりたくなった。昔、自分も素人ながら陶芸をやっており、自分の作品は自分の店のギャラリーで販売していた。当時の自分の作品は、ほとんど売ってしまって、手元には僅かに残るのみ。

 いつの日か、この『日月窯』で陶器を焼かせて貰えたら嬉しいな。





知る人ぞ知る ギャラリー『日と月』





令和七年 七月末 いよいよ八ヶ岳はシーズン到来!




前項へ


獨笑のTOPへ
戻る

インデックスへ