信仰と科学

 国連のある調査によると、過去
300年間に大きな業績をあげた世界中の科学者300人のうち、8割ないし9割が神仏を信じていたそうです。諸兄諸姉も名前をご存じの高名な科学者の多くが、神仏や信仰について熱い思いを語っております。最も神仏の領域を侵食しているかに思える宇宙論や素粒子論を扱う理論物理学者でさえ、そうなのです。

  (BLUE BACKS 科学者はなぜ「神」を信じるのか 三田一郎 講談社 3頁』)

 どうして、神仏を否定するかのような研究をしている人達が、神仏を信じるようになるのでしょうか。

 昔の人にとって、宇宙はどのようにして創られたのか、生命はいかにして誕生したのかは、人智の到底およばな奇跡でした。そこで、彼等はこれらの奇跡を〝神仏の為せる業〟といたしました。ところが、科学の進歩は、月に人間を送り込んだり、クローンひつじを造ることを可能にいたしました。そればかりか、昨今、量子論の展開、人ゲノの解読とその応用、AIの研究など、とどまることを知らない科学の発展は、人智のおよばない領域をどんどん縮小させております。このような奇跡の減少が、神仏を否定する人間を増加させたものと思われます。しかしながら、宇宙創造や生命誕生を深く研究している科学者にとっては、科学によって宇宙の始まりや生命誕生などを少し理解したと思っても、それと同時に、今まで気づかなかった疑問が次から次へとわいてきて、深く研究すればするほど「奇跡」としか言いようのない数々の事実に直面するのだそうです。このような事情から、科学者の多くは、そこに何らかの意思(神仏)の存在を認めるようになるのではないでしょうか。

 口は悪いですが、無神論者は科学の限界を知らないからこそ、神仏を否定出来ているのかもしれません。そこで、次に、宇宙誕生・生命誕生等において、どれほどの奇跡がこれまで起きていたのかを概観してみましょう。

 

奇跡その① 宇宙の創造

 マーティン・リースは『宇宙を支配する6つの数』という本で、宇宙において決定的に重要な役割を演じている六つの数をあげています。
 ビッグバンから、どのようにして、何十億もの銀河やブラックホールや星や惑星が生み出されたのでしょう。宇宙のどのような力があずかって、生命は誕生したのでしょう。これについて、彼は、宇宙創造の原初に刻印された、たった六つの宇宙数が我々の宇宙を、そしてこの宇宙に生きている私達を運命づけたとしております。そして、これら六つの数は、どれか一つでも別の値であったなら、宇宙はすっかり様変わりし、生命は存在できなかったと結論付けております。
 六つの数とは、具体的には、原子核がどれだけ固く結びついているかを示す数字、反重力の強さを示す数字などのことですが、紙幅の都合上からここでは詳述を避けさせていただきます。われわれの宇宙におけるこれら六つの数は、あまりにも都合が良いように調整された値となっております。要は、奇跡中の奇跡なのです。どうしてこのような奇跡が起きたのでしょうか。


〇ユニバースかマルチバースか

 神仏の存在を信じる我々は、現在の宇宙(ユニバース)が創造され、そのうえ生命が誕生し、さらには人間にまで進化できるほど上手く六つの数が調整されたのは、まさに神仏の意思が働いたからだと考えます。
 これに対して、どうしても神仏の存在を認めたくない方々は、神仏なしでこの奇跡をなんとか説明しようといろんな説を、唱えております。その一つが、多元宇宙論という考え方です。わたしたちの宇宙は、たくさん生まれた宇宙(マルチバース
の中の一つに過ぎないと、彼等は考えます。中には、10500乗個の宇宙が出来たとする説さえご
ざいます。
10500乗個すなわち無限とも言えるほどの数の宇宙が誕生したのだから、一つぐらいは奇跡中の奇跡といえる我々の宇宙が出現してもおかしくないだろうと考えるのです。
 かかる説を紹介させて頂いたのは、我々の宇宙がどれだけ特別な存在なのかを知って頂くためです。実際には多元宇宙論は証明不可能だとされております。万が一、このような多元宇宙論の正しさが証明されたとしても、神仏がわれわれの宇宙を創造されたことを否定することにはなりません。なぜならば、「神仏を抜きにしても我々の宇宙は出
現できた」という結論が得られたとしても、そのことは「神仏が我々の宇宙創造に手を出されなかった」という証明にはならないからです。
 



奇跡その②
生命誕生、そして進化 

 神仏は、宇宙を誕生させたばかりではありません。その後、地球を誕生させ、続いて生命をも誕生させました。そして、その後も神仏の御意思は働きました。以下に、ごく一部に過ぎませんが、神仏の御意思が働いたと思われる事象を指摘させて頂きます。


〇太陽からの距離

 私たちのような種類の生物は、「液体の水」がなければ生きのびることができません。その「液体の水」が、地球上で存在するためには、地球と太陽の距離が現在の0.951.15倍という極めて狭い範囲に限られるのだそうです。このことより、生命にとって好都合な公転軌道とは、ほぼ真円に近いものでなければなりません。
 非常に扁平(へんぺい)な楕円軌道上を動くハリー彗星の温度は、近日点(軌道上で最も太陽に近づく点)47℃、遠日点(太陽から最も遠い点)では氷点下270℃にもなります。遠日点では、水はガチガチな氷となってしまいます。


〇木星のはたらき
 木星の位置もまさに望ましいところにあります。というのは、木星の巨大な引力がいわば掃除機の役割を果たし、地球に衝突して致命的な災厄(さいやく)を及ぼしかねない小惑星を取り除いてくれたからです。木星は生命が進化するのに必要な時間を与えてくれました。

〇月のはたらき
 地球は他の太陽惑星とは異なり、相対的に非常に大きな衛星(月)をもっておりますが、そのおかげで地球の自転軸の向きは長期間にわたりほぼ一定です。その結果、地上の気候が比較的安定したので生物の進化が可能となりました。

〇地球の磁場
 地球には磁場が存在いたします。コンパスのN極が北をさすのも磁場があるからです。磁場があるのは、そう当たり前のことではありません。たとえば、金星や火星には磁場がございません。27億年前に、地球の磁場がそれまでの4倍ほどの強さ(現在のレベル)となり、太陽風※から地球が保護されるようになりました。生物は深海から浅海に、そして地表へと進出できるようになりました。


※太陽風
 太陽の大気が宇宙空間に放出されたもので、電気を帯びた高エネルギーの粒子です。太陽風は生物にとって有害な放射線です。


〇地球大気
 我々は地球の大気を通じて太陽光を受け取っております。この大気が紫外線やX線、ガンマ線を全て通過させていたならば、生物の体を構成するタンパク質は致命的な損傷を受けてしまい、知的生命への進化は出来なかったと考えられております。

〇水の物理化学的性質
 氷は水に浮きます。H₂Оは液体の状態(水)よりも個体(氷)のときの方が密度が低いからです。これは通常の物質とは逆で、水がもつ極めて例外的な特徴です。水は4℃を境にして、それより温度が下がると体積を増し、水面に向かって上昇いたします。その結果、水は水面から凍り始めます。この性質のおかげで、氷河期や全球凍結の時代、湖や海の水面近くは凍りつきましたが、その下には大量の液体の水がのこり、多くの動・植物が生き残るのを可能にいたしました。

〇全球凍結(スノーボールアース)
 地球全体が丸ごと凍ってしまう現象が、過去に少なくとも3回あったとされています。しかも、そのような過酷な環境が、生命の進化を促したと考えられております。というのも、原核生物が真核生物※に進化したタイミング(約22億年前)、単細胞生物が多細胞生物に進化したタイミング(約7億年前)が、どちらも全球凍結の直後だからです。


※真核生物 
 真核生物は真核細胞でできている。真核細胞とは核膜で囲まれた明確なをも細胞のことである。原核細胞である細菌と藍藻(らんそう)以外は、すべての生物の細胞がこれに属するといえる。真核細胞は、ミトコンドリア、葉緑体、小胞体など、明確な顆粒状あるいは小胞状などの細胞内器官を多数もっていて、この点でも原核細胞と異なる。 マーク・リドレーは、『メンデルの悪魔』という著書のなかで、「様々な手の込んだ構成要素をもつ真核細胞の出現こそ、生命の起源以上に、困難で統計学的にあり得ないステップであった」と述べております。

 

〇小惑星の衝突(地球第六周期律の終焉)
 6550万年前に小天体が地球に衝突した際に惹き起こされた環境・気候の激変が、恐竜絶滅の原因だとされております。この事件がなければ、陸上は恐竜などの巨大爬虫類(はちゅうるい)に支配されたままで、哺乳類(人間も)が繁栄することは不可能だったとされております。


まとめ

 前述したように、「過去300年間に大きな業績をあげた世界中の科学者300人のうち、8割ないし9割が神仏を信じていた」との国連の調査がございます。
 信仰や宗教の側にいる者も、神仏の御配慮を深く理解するために、ときに科学者たちの知見に耳を傾けるべきように思われます。というのも、世界中の信仰や宗教を比較してみますと、それぞれの教えに相違点が沢山ございます。原因は、各信仰・各宗教の教えに、人間の知恵や方便が入り込んでしまっているからです。そうだとするならば、信仰者や宗教者と言えども、絶対的な真理をうたうばかりではなく、謙虚に科学者の言うことにも耳を傾けるべきように思われます。以上より、今の時代、信仰と科学とを対立的にとらえるべきでないと、私は考えております。